福島生まれの私は東京に来てから頭痛に悩まされることが多かった。東京の独特な気候や人の多さが原因だと自分では考えている。
薬を飲まない私は、改善しない頭痛を抱えるのが1つのストレスだった。

スティーブ・ライヒの「MUSIC FOR 18 MUSICIANS」を初めて聞いたのは、そんな慢性的な頭痛を抱え始めた時だった。
ECMからリリースされたこの作品は、とにかくジャケットのデザインが好みで内容を気にせず聴いたことを憶えている。

反復するリズムとメロディ、微細な音響の差異や変化は当時ミニマル・ミュージックを知らない自分にとっては衝撃的な内容だった。
なにより1番衝撃的だったことは私の頭痛が治まっていることに気付いた時だった。

ミニマル・ミュージックに頭痛の改善が見込まれる科学的根拠などあるはずがなく、作品の説明にも書いてはないが、頭痛を治める効果が何かしらあるとすれば、それは何が原因なのか私なりに考察することにした。

注目したのは、反復と持続時間だった。
考えてみると、私たちの生活の中で規則的に反復する音や現象は不自然に見えるものである。
踏切の警報音やお坊さんが叩く木魚、貧乏ゆすりなど意識してなくても注意を引き付けられる場合が多い。

ミニマル・ミュージックにおける反復もこれらと同じで、メロディの繰り返しや等間隔のテンポが感覚や注意を引き付ける作用があるのだと感じる。
また、1つの反復するメロディだけでなく楽曲全体を通した持続時間にも注目したい。

先述した「MUSIC FOR 18 MUSICIANS」は Pulse – Sections I – IV【27分】Sections V – XI – Pulse【32分】で構成されている。
曲はパルス音【マリンバ】から始まり、次第にヴァイオリン、ボイス、ピアノなど様々な楽器や音が大都市のビルを構築していくように、時間をかけてダイナミックな完成形に積み上がっていき、ある種のトランス状態を体験出来る。
私の頭痛が収まったのは、こういった音楽的特徴に紐づいた心的効果が大きかったのではないか。

そうでなくてもミニマル・ミュージックには、人間の根本的な部分に作用する何かがあるに違いないと私は感じている。

頭痛持ちの人には勿論、興味がある人は是非聴いて頂き、その効果を実感して頂きたい。