夜の公園と書いて人間オムニバス。
遊具、ベンチ、それぞれに流れる重すぎる物語。

ことあるごとに足が向いてしまう公園がある。
なんかまっすぐ帰りたくないとき、バンドメンバーとダベるとき、気になる女の子と遊んだ夜、名残惜しくてもう少し話したいとき。

ローソンで酒とつまみを買い、店の横の薄暗い通りに入って数分歩く。
やがて見える大きな鳥居の向こうはもう人間劇場。黄昏流星群。課長島耕作。
たいてい先客がいる。遠くからでもわかるほどの地獄のような空気感でベンチに座る男女。このあと起きることを仄かに期待してブランコに座る男女(付き合ってない)。すべり台の周りで、とりとめなくずっと6割くらいのテンションで盛り上がる若者集団。

未整理で、未完で、プライベートな感情だけがここにある。小洒落た喫茶店やバーのような場所じゃできない。

ある夜、本当にどうにもならない、誰と話しても一人でも心がおぼつかないほど落ちていた自分は、気付いたら酒を片手にこの公園のベンチにいた。
今夜ばかりはどうしようもない。目に入る全員が満たされた顔に見える。
一人残らず自分より幸せそうだ。きっと全員やわらかい気持ちとやらで小さな幸せを実感しながら生きてるんだろう。俺ときたらどこにも行けない、誰にも会えない、きっと明日も明後日もこうやっ

「リンダリンダーー!!!ギャハハ!!!」

 

突然、全ての闇を切り裂くように響く、目の前の若者が歌うブルーハーツ。そのまま公園を後にする彼ら。
あれ、俺なんで酒持ってこんなとこいるんだっけ?死ぬほど悩んでた気もするけどそれより急にめちゃくちゃ腹減ってきた。
何も解決してないけどとりあえず今はブルーハーツ聴きながら帰って、家着くまでは置いとくか。どうにもならなくなったらまた酒買って来よ。

(あの店この店、と銘打っておいて神社の話ですみません)
すずき

場所:
北澤八幡神社
東京都世田谷区代沢3-25-3

レコード:
ブルーハーツの1ST